「泡」を「工程設計」で制御しませんか?
食品製造プロセスにおいて発生する泡は、単なる空気の集合ではありません。タンパク質、多糖類、脂質、界面活性成分など、食品中に本来含まれる天然由来成分によって安定化された「構造体」として存在しています。そのため、食品工程で発生した泡は時間の経過によって自然に消失するとは限らず、むしろ撹拌・加熱・循環といった工程作用によって維持、あるいは増幅されるケースも少なくありません。
ここで重要になるのが、消泡に対する考え方です。
食品製造の現場では、泡が充填不良や生産性低下といったトラブルとして顕在化してから、消泡剤の追加投入や製品変更が検討されることが一般的です。しかし実際には、泡の発生量や安定性、その残存挙動の多くは、使用する消泡剤そのものよりも工程条件によって規定されています。言い換えれば、消泡とは後工程で対処する補助的手段ではなく、製造プロセスの設計段階から組み込むべき要素です。
「消泡剤を選ぶ」という視点から一歩進み、食品プロセスごとに異なる泡の性質と、それに適合した消泡アプローチについて解説します。消泡を材料選定ではなく“工程設計”として捉えることで、安定した生産と品質制御をどのように実現できるのかを整理していきます。

工程によって泡の性質はまったく異なる
食品製造において「泡」という言葉は一括りに扱われがちですが、実際にはその発生メカニズム、安定化要因、そして設備への影響は工程ごとに大きく異なります。この違いを理解しないまま消泡剤を選定すると、「効く工程」と「効かない工程」が同時に存在する状態が生まれます。結果として、追加投入、過剰使用、品質ばらつきといったコスト増要因を招くことになります。つまり、消泡剤選定は製品スペック比較ではなく、工程理解から始める必要があります。
撹拌混合工程
液体原料の溶解や混合工程では、インペラ回転や高速撹拌による機械的せん断が空気巻き込みの主要因となります。この工程で生成される泡は粒径が小さく数が多いことが特徴であり、原料中に含まれるタンパク質や乳化成分が瞬時に気液界面へ吸着することで短時間のうちに安定化します。問題となるのは単純な泡残存ではありません。
槽内の実効容量低下や、液面センサーの誤検知、投入量制御の不安定化などといった設備運転への影響が先に顕在化します。購買視点では、「泡が消えるか」ではなく、安定した運転条件を維持できるかが評価軸となる工程です。
発酵工程
発酵工程では泡の性質が根本的に変化します。ここでは撹拌による外部混入ではなく、微生物代謝によってCO₂が連続的に生成されるため、泡は常時発生し続ける“内部生成型”となります。さらに、代謝産物
や、菌体由来成分、分解タンパク質等が界面活性作用を示すことで、運転時間の経過とともに泡の安定性はむしろ増加します。この工程において瞬間的な破泡性能のみを追求すると、投入量増加や発酵阻害リスクにつながる場合があります。
重要なのは泡を壊すことではなく、泡が成長しない状態を維持する設計です。長時間運転を行う発酵設備では、消泡剤の選択が生産歩留まりとタンク稼働率に直結します。
加熱・濃縮工程
加熱工程では溶存ガスの放出が進み、同時に水分蒸発によって液粘度が上昇します。濃縮が進行するほど液膜排出速度は低下し、泡は破裂せず滞留する傾向を示します。いわゆる「抜けない泡」の状態です。この段階では強力な破泡性能だけでは対応できません。過度な消泡作用は再発泡を誘発し、逆に泡量を増加させるケースもあります。
求められるのは、分散状態の維持、高粘度系への適合、長時間の持続抑泡性、のバランス設計です。濃縮工程での不適合は、生産速度低下やエネルギー効率悪化として直接コストに反映されます。
洗浄(CIP)工程
CIP工程では食品とは異なり、洗剤中の界面活性剤によって極めて発泡しやすい環境が形成されます。ここで求められる性能は「強い消泡力」ではありません。排水性の確保、洗浄残渣の低減、泡による流量・導電率センサー誤作動防止といった設備運用上の安定性が優先されます。食品工程用消泡剤をそのまま適用すると、排水トラブルや再洗浄の発生につながることもあり、工程目的そのものが異なる設計思想が必要となります。
充填・移送工程
配管移送や高速充填工程では、圧力変動や乱流によって一度消失した泡が再発生する「再発泡」が問題となります。特に近年の高速ラインでは、ポンプ剪断・落差充填・ノズル通過時の圧力解放が複合的に作用し、最終工程で泡問題が顕在化するケースが増えています。同一製品を使用していても、この工程のみ歩留まり低下が発生する理由はここにあります。
求められるのは、発泡抑制・瞬間的破泡・再発泡防止を同時に成立させる制御です。食品製造における泡対策とは、単一性能を持つ消泡剤を選ぶことではありません。工程ごとに異なる泡の物理特性を理解し、どの工程で、どの挙動を制御するのかを設計することが、本質的な最適化につながります。そしてこの視点こそが、消泡剤コスト、投入量、設備安定性を同時に改善する出発点となります。

業界プロセス別に考える消泡設計
食品製造における泡は工程ごとに発生要因も安定化メカニズムも大きく異なります。したがって、単一の消泡剤で全工程を最適化することは現実的ではありません。実際の現場では、
ある工程では十分な効果を示す一方、別工程では投入量増加や品質影響が発生する
という状況が頻繁に見られます。これは消泡性能の優劣ではなく、工程要求と消泡挙動が一致していないことに起因します。食品プロセスにおいて重要なのは、「泡を消す」という発想から一歩進み、目的に応じて消泡挙動そのものを設計するという考え方です。
発酵工程― 持続抑泡型設計 ―
発酵タンクでは、微生物代謝によりCO₂が連続生成されるため、泡は停止することなく発生し続けます。この環境では強い破泡型を使用すると、過剰添加、発酵効率低下等といった副作用につながる可能性があります。求められるのは瞬間的な泡破壊ではなく、泡が過剰成長しない状態を長時間維持することです。
例えば、培養液表面で緩やかに作用し続ける設計、低濃度でも効果が持続する分散制御といった「持続抑泡型」が有効となります。これはタンク占有率の向上や夜間無人運転の安定化に直結する要素でもあります。
飲料・液体調合工程― 瞬間破泡型設計 ―
飲料や調味液の調合工程では、高速撹拌やライン循環によって大量の微細泡が短時間に生成されます。ここで問題となるのは泡の滞留時間です。充填前に泡が残存すると、内容量ばらつきや、充填速度低下が発生します。
この工程では長時間作用型よりも、泡生成直後に界面へ到達し即座に破泡する応答速度が重要となります。代表的には、低粘度キャリアによる高速拡散、少量添加での瞬間効果発現といった瞬間破泡型設計が適しています。結果としてライン停止リスク低減や充填効率向上につながります。
高粘度食品工程― 分散安定型設計 ―
ソース、クリーム、ペースト、植物由来代替食品などの高粘度系では状況がさらに複雑になります。粘度上昇により消泡成分自体が移動しにくくなり、局所的な効果ムラが発生しやすくなります。この場合、強い消泡性能を持つ材料であっても、混合初期のみ効果発現、後工程で再発泡等が発生します。
重要なのは、消泡成分が製品中で均一に存在し続けることです。そのためには、長期分散安定性、沈降・分離抑制を考慮した分散安定型設計が必要になります。これは品質再現性を重視する購買・品質保証部門にとって極めて重要な要素です。
シリコーン消泡剤が持つ設計自由度
ここで初めて、シリコーン消泡剤の本質的な優位性が明確になります。シリコーン系材料は単一性能の添加剤ではなく、以下の設計要素を組み合わせることで挙動を大きく制御できます。
粘度設計による拡散速度制御
分散粒径による作用タイミング調整
固体粒子構成による持続性付与
これらを調整することで、「すぐ効く」「長く効く」「残らない」「再発泡しない」といった相反する要求を工程ごとに最適化することが可能になります。つまりシリコーン消泡剤とは、単なる材料ではなく、食品プロセスに適合させて設計できるプラットフォーム材料と位置付けることができます。
安達新産業株式会社が提供する消泡アプローチ
安達新産業株式会社では、消泡剤を単なる添加剤として選定・供給するのではなく、食品製造プロセスを安定化させるための“工程要素”として捉えています。食品工場における発泡トラブルの多くは、材料性能そのものではなく、工程条件との不適合、添加タイミングのばらつき、過剰または不足添加といった複合要因によって発生しています。
そのため、消泡剤の銘柄変更のみで根本的な改善に至るケースは決して多くありません。安達新産業株式会社は、グローバルシリコーンメーカーであるMomentive Performance Materialsの特約店として、世界的に実績を持つシリコーン消泡技術を基盤にしながら、材料選定と工程理解を一体化したアプローチを行っています。
重要なのは、「どの消泡剤を使うか」ではなく、どの工程条件下で、どのように作用させるかという視点です。消泡とは製品変更による対症療法ではありません。それは、生産効率・品質再現性・設備安定稼働を同時に向上させるための工程最適化活動そのものです。
安達新産業株式会社は、モメンティブの幅広いシリコーン技術ラインアップと現場理解を組み合わせることで、食品メーカーの安定生産を支える実装型の消泡ソリューションを提供しています。


