シリコーン選びで迷わないために ― 用途別に見る選定ポイントとよくある失敗例

パッキンやシーリング材、コーティング剤など、私たちの身の回りのものづくりには「シリコーン」が幅広く使われています。耐熱性や柔軟性、防水性に優れた“万能素材”として知られていますが、実際に選ぶとなると「どの種類を使えばいいのか分からない」と悩む方も多いのではないでしょうか。この記事では、一般工業用途でシリコーンを選ぶときの基本の考え方と、よくある失敗例をわかりやすく紹介します。
① なぜシリコーン選びは難しいのか
一口に「シリコーン」といっても、ゴム状のもの、液体タイプ、スプレータイプなど多くの種類があります。モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパンの製品においても、硬さ・粘度・耐熱温度・接着性などの特性が異なり、用途によって最適なグレードが変わります。
たとえば、こういう経験がある方もいるかもしれません。
- 熱に強いタイプを選んだのに、弾力が足りなかった
- 接着用と思って使ったら、まったくくっつかなかった
「万能」と思われがちなシリコーンですが、使う目的や環境によって結果が大きく変わる素材なのです。
② シリコーンを選ぶときに確認したい5つのポイント
シリコーンの選定では、硬さや耐熱性などの数値だけでなく、「どのような条件で使うか」を見極めることが大切です。カタログ上は同じように見えても、硬化条件や素材との相性によって性能はまったく変わります。以下の5つのポイントを押さえておくことで、用途に最適なグレードを選びやすくなります。
| チェック項目 | 内容・考え方 |
|---|---|
| ① 用途 | 接着、コーティング、シール、絶縁、離型など。まず“何に使うか”を明確に。 |
| ② 硬化の仕方 | 加熱で固まる、空気中の湿気で固まる、光を当てて固まるなど、タイプごとに使い方が違う。 |
| ③ 硬さと柔らかさ | 柔らかいと伸びるが形が崩れやすい。硬すぎるとひび割れしやすい。 |
| ④ 耐熱・耐候性 | 使用温度や屋外環境を確認。屋外では紫外線・雨への耐性が必要。 |
| ⑤ 接着する素材 | ガラス・金属・プラスチックなど、素材によって密着性が変わる。 |
③よくある失敗例とその原因
カタログや仕様書どおりに使ったはずなのに、うまく硬化しなかったり密着しなかったり――。シリコーンは使用環境や基材の状態に敏感な素材のため、条件のわずかな違いで結果が変わることがあります。以下では、現場で実際に起こりやすいトラブルとその原因を整理しました。
| 失敗例 | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|
| しっかり固まらない | 湿気硬化タイプを密閉環境で使用 | 加熱硬化タイプに変更するか、通気性を確保 |
| はがれやすい | 油分・ホコリ・離型剤が残っている | 使用前に表面を洗浄、プライマーを使用 |
| 黄ばむ・白く濁る | 紫外線や熱による劣化 | 耐候性・耐UVタイプを選ぶ |
| ベタつく・埃がつく | 完全硬化前に触れる/柔らかすぎるタイプ | 完全硬化を待つか、硬めのグレードに変更 |
| 作業がしづらい | 粘度が高くて伸びにくい | 低粘度タイプやスプレータイプを検討 |
④用途別の選定ヒント
同じシリコーンでも、封止材・離型剤・絶縁材など、用途によって必要とされる特性は大きく異なります。選定を誤ると、密着不良や硬化ムラなどのトラブルを引き起こすこともあります。用途別に押さえておきたい性能要件と選定の考え方を整理しました。
| 用途 | 選定のポイント |
|---|---|
| シール・パッキン | 柔軟性と耐候性を重視。屋外は耐UVタイプを推奨。 |
| 接着・封止 | 接着対象(ガラス・金属など)との相性を確認。 |
| コーティング | 薄く均一に塗れる低粘度タイプが使いやすい。 |
| 離型剤 | 成型・樹脂加工では低表面エネルギータイプを選ぶ。 |
| 絶縁・保護 | 電気を通さず、水分や埃から守るタイプを選定。 |
⑤ シリコーン選定で失敗しないために
シリコーンは非常に汎用性が高い一方で、「何でも使える」ゆえに選定を誤りやすい素材でもあります。たとえば、同じ「絶縁用」と書かれた製品でも、放熱特性や耐湿性、粘着力の有無などが異なり、用途によっては全く適さない場合もあります。とくに電子部品や機器内部に使用する場合、温度条件・材料との相性・硬化収縮・ガス発生といった要素がトラブルの原因になりやすいため、カタログデータ(モメンティブ社の場合は、TDS(=Technical Data Sheet))の数字だけで判断するのは危険です。
選定で失敗しないための基本は、次の3点を押さえることです。
- 「どの機能を最優先するか」を明確にする
絶縁?防水?耐熱?柔軟性? どの性能が最も重要かを最初に決めることで、候補を大きく絞り込めます。 - 使用環境を具体的に想定する
屋内か屋外か、温度サイクルや湿度変化の幅、接触する材質など、実際の使用条件を明確にします。これにより、経年劣化や剥がれのリスクを最小限にできます。 - メーカーや専門業者に相談する
シリコーンはグレードが多岐にわたるため、仕様書だけでの判断は困難です。特に電子機器のような高信頼用途では、実績や成分特性を熟知したパートナー企業との協議が重要になります。
シリコーンは“選び方次第”で、機器の信頼性を大きく左右する素材です。単なる消耗品ではなく、製品寿命を左右するキーマテリアルとして捉え、じっくりと比較検討する姿勢が、結果的にコスト削減と品質向上の両立につながります。
まとめ
シリコーンは、一見どれも似て見えても、グレードや用途によって性能は大きく異なります。電子部品の保護、絶縁、接着、防水、防湿など、目的に応じた最適な選定こそが製品の信頼性を支える鍵となります。
安達新産業では、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社の特約店として、シリコーン製品を幅広く取り扱う専門ディストリビュータです。製品特性を熟知し、使用条件や目的に応じた最適な製品をご提案しています。単なるカタログ紹介にとどまらず、現場での使用環境や課題を共有しながら、最も適した材料を選び出すサポートを行っています。
「どのシリコーンを選べば良いか分からない」「複数メーカーの特性を比較したい」といった場合も、ぜひお気軽にご相談ください。私たちは、豊富な実績と知見をもとに、お客様の製品開発・製造を支える最適なシリコーン選定をお手伝いします。


