シリコーンとは?-私たちの生活と産業を支える万能素材

耐熱のキッチン用品やスマートフォンの防水パッキン、医療用のチューブなど、私たちの身の回りには実は多くの「シリコーン」が使われています。
高温にも紫外線にも強く、柔らかく加工しやすい――。
そんな万能素材・シリコーンは、暮らしと産業の両方を支える欠かせない存在です。
①シリコーンとは
シリコーン(Silicone)は、ケイ素(Si)を主成分とした合成高分子化合物です。分子構造としては、ケイ素と酸素が交互に結合した「シロキサン結合(-Si-O-Si-)」を基本骨格に持ち、その側鎖に有機基(メチル基やフェニル基など)が結合しています。この独自の構造により、シリコーンは「無機」と「有機」の特性をあわせ持つ、非常にユニークな素材となっています。
②無機と有機の”いいとこ取り”とは?
1. 無機の特性:強さと安定性
無機材料(ガラスやセラミックスなど)は、一般的に「丈夫で壊れにくい」性質を持っています。シリコーンの主鎖であるSi-O結合は、炭素-炭素(C-C)結合よりも結合エネルギーが高く、熱や紫外線に対して非常に安定です。そのためシリコーンは、
- 高温下でも分解しにくい
- 紫外線やオゾンでも劣化しにくい
- 化学薬品や水分に対して耐性がある
といった「無機的な強さ」を備えています。
2. 有機の特性:柔軟さと加工性
一方で有機材料(プラスチックやゴムなど)は、「柔らかく、自由に形を変えやすい」特徴があります。シリコーンでは主鎖に結合したメチル基やフェニル基などの有機基が分子の動きを柔らかくするため、ゴムのように伸び縮みしたり、オイル状に流動性を持たせたりすることが可能です。これにより、
- 柔らかくてしなやかなゴム
- サラサラとしたオイル
- 固くて透明な樹脂
といった「有機的な多様性」を実現できます。
3. 無機と有機の”二刀流”が生む独自性
普通、無機と有機は相反する性質を持ちます。「無機」は強いけど硬くて割れやすい。「有機」は柔らかいけど熱や紫外線に弱い。ところがシリコーンは、無機の骨格に有機の柔軟さを組み合わせることで、
- 「熱や紫外線に強いのに、ゴムのように柔らかい」
- 「水や薬品に強いのに、透明で加工しやすい」
- 「電気を通さないのに、しなやかで薄膜にもできる」
という、他の材料にはない独自の性質を発揮します。
4. ユニークさが生む応用の幅
この”二刀流”の性質があるからこそ、シリコーンは身近な製品から先端技術まで幅広く使われています。
- 生活用品:高温に耐える調理器具、壊れにくい生活雑貨
- 医療分野:体にやさしいチューブやインプラント
- 自動車・建材:耐候性に優れたシーリング材、ガスケット
- エレクトロニクス:IC封止材、LEDレンズ、絶縁材
つまり、シリコーンが「ユニーク」と言われるのは、本来なら両立しにくい”強さ”と”柔らかさ”を同時に備えているからなのです。
③どんな性質があるの?
シリコーンは次のような性質を持っています。
- 耐熱性:200℃以上の高温でも安定して使える
- 耐寒性:-50°C程度の低温でも硬くなりにくい
- 耐候性:紫外線や雨風に強く、屋外で長持ちする
- 柔軟性:ゴムのようにしなやかで弾力がある
- 撥水性:水を弾きやすく、汚れにくい
- 電気絶縁性:電気を通さないため電子部品に適している
- ガス透過性:他の高分子材料と比べて非常に高いガス透過性を持つ
これらの特性から、シリコーンは「極端な環境に強い万能素材」として、さまざまな場面で利用されています。
④私たちの身近での活躍
実はシリコーンは、私たちの生活のあらゆる場所に使われています。
- 調理器具:シリコーン製のヘラ、オーブン用の型は高温でも溶けない
- 家電や自動車:内部のパッキンやシーリング材で、熱や振動に耐える
- 化粧品:シャンプーやスキンケア製品に含まれ、滑らかな使い心地を実現
- 医療:体に優しい素材として、チューブや人工関節に利用
- 電子機器:絶縁材や保護材として、スマートフォンやパソコンを支える
⑤まとめ
シリコーンは、ケイ素と酸素がつくる安定した骨格と、有機基による柔軟性をあわせ持つ、他に類を見ないユニークな素材です。高温から低温まで幅広い環境に耐え、紫外線や水にも劣化しにくく、さらに加工性や設計自由度にも優れていることから、調理器具や生活雑貨といった身近な製品から、エレクトロニクス・自動車・エネルギー・医療分野などの最先端技術まで、非常に幅広い分野で活躍しています。
安達新産業では、このシリコーンの持つ多彩な特性を最大限に引き出し、用途に合わせた材料選定や加工方法の提案に取り組んでいます。一般消費財から高機能部材まで、お客様の課題に寄り添いながら、シリコーンの可能性をさらに拡げていくことを目指しています。


