シリコーン接着剤のベストセラー「TSE39×5シリーズ」徹底解説!

はじめに:「何を使えばいいか迷ったら、まずこれ」
——現場エンジニアが知っておくべき、この製品が選ばれ続ける理由
電気・電子機器の製造現場や研究開発の現場で、シリコーン系接着剤・シール材を選ぶ場面は多くあります。耐熱性が必要、腐食させたくない金属がある、速く硬化させたい、コストを抑えたい——そうした複数の要件が重なるとき、毎回ゼロから製品を探し直すのは時間のロスです。
「迷ったらとりあえずこれを使う」という信頼の一本をストックに持っているエンジニアは多いはずです。そのポジションを長年にわたって占め続けているのが、モメンティブの TSE39×5シリーズ(TSE3925・TSE3975・TSE3995) です。このシリーズがなぜ多くの現場でベストセラーとして選ばれ続けているのか、技術的な裏付けとともに詳しく解説します。
1. TSE39×5シリーズとはどんな製品か
TSE39×5シリーズは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(旧GE東芝シリコーン)が提供する、1成分室温硬化型(RTV)シリコーン接着シール材です。
「1成分」というのは、使う直前に2液を混合する必要がなく、チューブやカートリッジからそのまま塗布・充填できるという意味です。これは現場での作業性に直結する大きな利点です。
硬化のメカニズムは湿気硬化型(いわゆる縮合型)です。空気中の水分(湿気)と反応して室温で硬化が進み、最終的にゴム状の弾性体になります。加熱炉や紫外線照射装置などの特別な設備は不要です。
脱離成分がアルコール(エタノール)であることも重要な特徴です。後述する非腐食性の根拠のひとつがここにあります。また、TSE39×5シリーズは従来の同系製品(TSE392・TSE397・TSE399など)と比べて、低分子シロキサン(揮発性シロキサン)の含有量を大幅に低減した改良版に位置づけられます。

2. シリーズのラインアップと使い分け
TSE39×5シリーズは、粘度や流動性の異なる3グレードで構成されています。
| 品番 | 流動性 | 主な用途 |
| TSE3925 | 非流動性 (ペースト状) | 垂直面・狭いすき間への塗布、 形状を保ちたい部位の接着・シール |
| TSE3975 | 流動タイプ(中粘度) | 一般的な接着・シール・ポッティング作業 |
| TSE3995 | 流動タイプ(低粘度) | 狭い隙間への浸透、 複雑形状のポッティング、コーティング |
それぞれカラーバリエーション(クリア・ホワイト・ブラックなど)も用意されているため、製品の外観要件に応じて選ぶことができます。
どれを選べばいいか迷ったときの目安:
- 垂直面や天井面への施工 → TSE3925(たれにくい)
- 汎用的な接着・シール → TSE3975(最も汎用的)
- 入り組んだ構造への浸透・充填 → TSE3995(流れ込みやすい)
3. 技術的特長
①:速硬化性とその仕組み
現場でシリコーン接着剤を使う際、硬化時間は生産性に直接影響します。「塗ったあと何時間も待てない」という声は多く、ここがTSE39×5シリーズの大きな強みのひとつです。
TSE39×5シリーズの最大の特長として「表面硬化性が速い」ことが挙げられています。表面硬化(指触乾燥)が速いということは、塗布後すぐに次の工程に移れる、あるいは位置ズレが起きにくいという実用上のメリットに直結します。
硬化の仕組みを整理すると
- 塗布直後から、製品表面が空気中の湿気に触れ始める
- 最外層から湿気硬化反応が始まり、表面にゴム状の皮膜が形成される(指触乾燥)
- 内部へ向かって硬化が進行し、最終的に全体がゴム弾性体になる(完全硬化)
完全硬化には塗布厚みや環境湿度により数時間〜数十時間かかりますが、指触乾燥時間が短い本シリーズは、製造ライン上でのハンドリング性に優れています。また、硬化後のゴムは耐リバージョン性(逆反応・分解への耐性)にも優れており、長期使用環境での性能維持という点でも安心感があります。
②:非腐食性——銅系金属も安心
シリコーン系接着剤・シール材の中には、硬化の際に**酢酸(酢酸型)**を脱離するタイプがあります。この酢酸が金属に対して腐食作用を持つため、電気・電子機器の基板や端子への使用には注意が必要でした。
TSE39×5シリーズは脱アルコール型(アルコール型)であり、硬化の過程でアルコール(エタノール)が脱離します。アルコールは金属に対して腐食性を持たないため、銅・銅合金(ブラスなど)を含む各種金属に対しても安心して使用できます。
特筆すべきは、MIL-A-46146B(米軍規格)の腐食試験に合格している点です。これは民間の電気電子機器向けとしてはオーバースペックとも思えますが、裏を返せば「信頼性の基準として非常に高いレベルでの検証がなされている」ことを意味します。
電子部品に直接塗布するケースや、接点近傍での使用が想定される場面でも、腐食リスクを気にせずに使用できることは大きな安心感です。
③:電気絶縁性の高さ
シリコーンゴムは本質的に優れた電気絶縁体ですが、TSE39×5シリーズはその点でも高い性能を発揮します。硬化後のゴム状弾性体は、以下のような用途に適した電気絶縁性を持ちます。
- 電気・電子機器の防水・気密のための接着・シール
- ハイブリッドIC・センサ・高電圧部品や回路のポッティング
- プリント基板のコーティング・絶縁保護
特に高電圧が印加される部品周辺への使用や、精密な電子回路の保護材として、信頼性の高い電気絶縁層を形成できます。シリコーン系材料の電気絶縁性は温度変化や湿度変化に対しても比較的安定しているため、屋外機器・車載機器・産業用制御機器などの過酷な使用環境でも安定した絶縁性能を維持できます。
④:耐熱・耐寒・耐候性
シリコーンゴムが他の有機系ゴムや接着剤と一線を画す最大の理由が、この広い温度対応範囲です。TSE39×5シリーズの硬化物は、耐熱性・耐寒性・耐候性のいずれにも優れており、過酷な環境条件のもとでも接着・シール機能を長期にわたって維持します。
使用温度範囲の目安
- 低温側:−50〜−60℃程度でも脆化せず柔軟性を保持
- 高温側:+200℃前後の連続使用に対応(短時間ならより高温まで)
一般的なエポキシ系やアクリル系の接着剤では、高温環境下での軟化・劣化が問題になることがありますが、シリコーン系はSi-O(シロキサン)結合のエネルギーが高いため、熱分解に強い構造を持っています。
耐候性の面では、紫外線・オゾン・湿気に対する耐久性が高く、屋外環境への長期設置を前提とした機器にも安心して使用できます。太陽光発電関連機器・屋外照明・通信インフラ機器など、屋外長期使用が求められる分野での採用実績も豊富です。
⑤:広い接着対象と優れた接着性
「万能接着剤」という言葉は誇張気味に使われることも多いですが、TSE39×5シリーズはそれに近い接着汎用性を持ちます。公式に接着性が確認されている基材は以下の通りです。
- 金属(アルミ、ステンレス、銅、真鍮など)
- ガラス
- プラスチック(ABS、ポリカーボネート、ナイロンなど各種)
- セラミック
注意点として、プラスチックの種類によっては接着性が異なる場合があります。特定の被着体に対しては、プライマー(ME121・ME123など)の使用により接着性をさらに向上させることができます。
実際の採用例を見ると、「金属・ガラス・プラスチックの複合構造部品」への接着シールというニーズが非常に多く、一種類の製品で複数材料間を接着・シールできる汎用性は、製品管理の観点からも大きなメリットです。

4. 低分子シロキサン低減という付加価値
TSE39×5シリーズの存在意義は、従来のTSE39×シリーズからの低分子シロキサン低減という技術的改善です。低分子シロキサン(揮発性環状シロキサン、D3〜D6など)は、シリコーン材料の副産物として微量に存在する成分です。
なぜ低分子シロキサンが問題になるのか
① 電気接点障害のリスク
低分子シロキサンが揮発し、電気接点や金属表面に付着すると、絶縁皮膜を形成して接触不良(接触抵抗の増大)を引き起こす可能性があります。精密な電気スイッチ・コネクタ・センサ類が近傍にある機器では特に注意が必要です。
② アウトガスによるデバイスへの影響
電子部品の封止・ポッティング材として使用する場合、低分子シロキサンのアウトガスが光学素子(レンズ、LED)の表面に付着し、透過率の低下や光学特性の劣化を引き起こすことがあります。
③ 製造環境の汚染
クリーンルームや精密加工環境では、シリコーン由来の揮発成分が他の製品の品質に悪影響を与えるリスクがあります。
TSE39×5シリーズはこれらのリスクを低減するために低分子シロキサンを抑えた処方を採用しており、より信頼性の高い電気・電子機器向け用途に適した製品となっています。
5.UL認定・MIL規格——信頼の裏付け
規格・認証は製品の信頼性を客観的に示す重要な指標です。TSE39×5シリーズは主要な規格への対応も確認されています。
UL認定
TSE3995-W(ホワイト)はUL94HB認定品です(File No. E56745)。UL94は、プラスチック材料の燃焼性に関する規格で、HBは「水平燃焼試験をクリアしている」レベルを意味します。電気機器部品として使用する場合、この認定は安全規格上の要件を満たす証明として機能します。
MIL規格(米軍規格)
MIL-A-46146B の腐食試験に合格しており、非腐食性の客観的な根拠となっています。特に軍需・航空宇宙・精密機器分野などで厳格な材料要件が求められる場面でも、この規格合格は採用検討の際の安心材料となります。
これらの規格・認定は「念のための取得」ではなく、実際の製品の品質を第三者機関が確認したものであり、カタログスペックを超えた実質的な信頼の証です。
6.コスト・入手性——選ばれ続けるもう一つの理由
技術的な優秀さだけが製品の選ばれる理由ではありません。調達しやすいこと、価格が安定していることも、製造現場での製品選定において非常に重要なポイントです。TSE39×5シリーズは、以下の点で調達しやすい製品として定評があります。
① 安定した供給実績
モメンティブはシリコーン材料のグローバルリーダーとして長年の供給実績を持ちます。TSE39×5シリーズは製品ラインナップの中でも長期にわたるベストセラー品であり、廃番リスクが低く、仕様変更も少ないため、製品への組み込み材料として中長期的なBOM(部品表)管理がしやすい製品です。
②小ロットから大ロットまで対応
チューブ(100g前後)から業務用の大容量パッケージ(18kgペール缶)まで複数の容量設定があり、R&D段階の少量評価から量産ラインの大量使用まで、フェーズに応じた発注が可能です。
③コストパフォーマンスの高さ
特殊用途向けの高機能シリコーン製品と比べ、TSE39×5シリーズは汎用品として価格競争力があります。「高性能だが汎用品」というポジションが、コスト管理を重視する製造現場に支持される理由のひとつです。

まとめ:TSE39×5シリーズが「ベストセラー」である理由
最後に「なぜこのシリーズがベストセラーであり続けるのか」を改めて整理します。
1. 速硬化性 — 表面硬化が速く、工程への影響が少ない
2. 非腐食性 — 銅系金属を含む金属への腐食リスクなし(MIL規格合格)
3. 優れた電気絶縁性 — 電気・電子部品のシールと絶縁を同時に実現
4. 広い温度対応範囲 — 耐熱・耐寒・耐候性により、屋内外・産業環境で安定使用
5. 高い接着汎用性 — 金属・ガラス・プラスチック・セラミックに対応
6. 低分子シロキサンの低減 — 精密電子機器・光学部品への悪影響を抑制
7. UL認定・MIL規格対応 — 客観的な信頼性の裏付け
8. 調達しやすさとコスト安定性 — 複数チャネルでの安定供給と価格競争力
これらの特長が揃って初めて、「困ったらまずこれ」という信頼感が生まれます。TSE39×5シリーズはその条件を高い水準でクリアしているから、長年にわたってベストセラーとして選ばれ続けているのです。
製品に関するお問い合わせ
TSE39×5シリーズの詳細な仕様、サンプルのご請求、お見積もりについては、モメンティブ特約店である安達新産業株式会社 AD-Chemi担当までお気軽にお問い合わせください。用途に応じた最適なグレード選定のアドバイスも承っております。
本記事に記載の技術情報は、公開されているモメンティブ製品の技術資料をもとに作成しています。最新の仕様・規格情報については、必ずメーカー公式資料またはSDS(安全データシート)をご確認ください。

